今年、長く一緒に働いた同僚が転職していった。
その同僚とは恐らく定年まで一緒に過ごすと考えていたので
すごく残念だったが、本人の意思によるものであるのだし精一杯の
気持ちで送り出そうと考えた。
やったことといえば、大したことはなく普通に仲良いメンバーでの
送別会を開いたのと個人的に送別の品を送ったくらい。
色々考えて、結局貰ってもそこまで迷惑ではないと思われたタオルハンカチ
を送る事にした。
タオルハンカチといっても一枚2000円以上するそこそこ良いブランドの品。
買う前にその人のイメージを思い、かなり悩んだあげく一枚を選んだ。
とても大人で頭の良い人、という自分とは正反対のタイプのその人に
グリーンベースのものを選んだ。
そのタオルハンカチが新しい職場で元同僚を少しでも守ってくれるといいな、
とそんな願いもひそやかに込めて選んだ。
今でも我ながら良い物を選んだと思う。
それからしばらく経って、この前久しぶりに前のメンバーで飲み会をした。
その元同僚は以前と変わらない雰囲気ではあるが、
少し前より大変なのかな、という気がした。
飲み会も終盤になり、元同僚がお手洗いに立つ時にカバンの中から
ハンカチを取り出した。
紛れもなく、自分があげたハンカチだった。
緑のタオルハンカチ。
それを見た瞬間とても嬉しくなった。
自分と元同僚しか知らない物であるし、元同僚も自分があげた物
である事を忘れているかもしれないが。
それでも、誰が何と言おうと嬉しかったのだ。
贈り物は貰う以上にあげる方が幸せを貰えるもの、
とはよく言うけれど、これがそういう事なんだなと
しみじみと嚙み締めた一瞬の出来事であった。