会社からの電車で。
自分の隣に大きな身体のサラリーマンが座った。
大きな身体に大きなカバン。
白髪が混ざった普通のおじさんサラリーマン。
ごそごそ何やらスマホをいじっている。
老眼のためかアイコンが全て大きくラインの内容が隣に座る
自分の目にも嫌でも飛び込んでくる。
この年代のおじさんでもラインを使いこなす時代なんだな。
と全く隠す様子もないおじさんのラインを何となく見させて
いただいた。
でも、もし内容が浮気相手とかだったらどうしよう・・・
その時は気まずいので見るのをやめよう。
なんていう無粋な事も考えながら・・・。
いざ、内容はおじさんに対するたぶん奥さんからのものだった。
「かっちゃん、帰りに〇〇買ってきてね」
というシンプルなものだった。
まず、その大きなおじさんサラリーマンが「かっちゃん」と呼ばれている
事に変に感動してしまった。
そして絵文字もスタンプも何も無い、シンプルなお願いラインに
対して「かっちゃん」はカバンから老眼鏡をつけて一生懸命に文字を
入力し可愛い絵文字もつけて返していた。
おまけに「了解しました!」というメッセージつきのスタンプまで
じっくりと選んで送信していた。
ここでもまた感動してしまった。
送られてきたのはシンプルで絵文字も無い一言ライン。
それに対しておじさんメール的な絵文字付きの言葉と
「了解しました!」のスタンプ付きの可愛いライン。
おじさんは満足そうにそれを眺めてスマホをしまった、と
思ったら、また追加で
「あと△△もお願い!」
とお願いラインがきた。
今度は「!」付きであったがシンプルである事には変わりがない。
それに対しておじさんはいそいそと、最初の時と同じように
精一杯の絵文字付きの文章と、さっきとは別の「了解」スタンプを
送信していた。
なんとなく一部始終を見ていた自分であるが、
もうその時には自分の中でもおじさんサラリーマンではなく
「かっちゃん」になっていた。
すごく心が温まった帰りの電車の出来事であった。