通勤電車の中で。
少しガタイのいいごついオジサンサラリーマンが乗ってきた。
たまたま隅の席が空き、そこにドカッと腰を降ろした。
何の仕事をしているのか良く分からないが、とにかく大きい。
気のせいかスーツが少し小さく見える。
一応マスクはしているのであるが、顔が大きいのかマスクが
普通サイズで顔の大きさに合っていないのか、顔のかなりの部分
はみ出している。
そして、そのおじさん、何か不満げに定期的に咳払いをする。
正直気になる。
こんな大きなオジサンにもし文句でもつけられたら、絶対に
言い返す自信がない。
たぶん周りの人もそう思っている事であろう。
彼の周囲の人は狸寝入りなのか、本当に眠いのか分からないが
みな下を向いている。
そこへ駅に着き、そのオジサン側の扉が開いた。
その瞬間、
「クッシュン!」
と少し高めの可愛いくしゃみが聞こえたのだ。
なんとそのオジサンから。
一瞬、自分の耳を疑ったのだが、ずっと様子をうかがっていた
のだから間違えようがない。
そのオジサンはうまく出せずにいたクシャミが出た安心感か
可愛いクシャミをしてしまった照れ隠しなのか、
マスクの形を直すような仕草をし、そしてそのまま眠り始めた
のであった。