小学校の思い出
父親の都合で転勤を繰り返していたその頃
3回目に変わったその小学校で彼女はいた
転校初日
みんなの前で挨拶し先生に教えられた席に座った
転校自体は慣れていた
今とは想像もつかないくらい社交性もあり
転校自体も慣れていたおかげで全く不安は無かった
本当に感覚的に友達の作り方というのを習得していた
もしかしたら今の時代なら通用しないかもしれない
それでも自分の時代にはそれでなんとか問題無かった
友達は笑っていればできるもの
小さいながらにそんな事を経験的に知っていた
だから彼女に話しかけられた時も笑顔で答えた
なんとなく遠巻きに見ていた他の生徒を尻目に
彼女は明るく話しかけてくれた
そして転校初日早々に家に遊びに来ることになった
小学校時代の友達
年賀所のやりとりもしておらず
名前も正確に覚えている友達も多くない中で
グループが違うという事で最後は全く遊ばなくなった
彼女の名前と顔だけは今でも鮮明に覚えている
今思い返しても、5年生の割には大人びていて
そしてとても綺麗な人だった
しっかりして頭が良くて
そして苦労人だった
当時の自分はあまり社会の闇や格差などについて
全く考えた事の無いお気楽な人生を送っていた
転校する前の学校もどちらかと団地やアパートに
住んでいる子供達が多く
もちろんお金持ちの子供も多くいたけれど
何も気にせずにみんなで遊んでいた記憶がある
でも新しい小学校は何かが違った
どちらかというと中流階級?が多数
あとはすごくお金持ち
そしてお金が無い家の子供達が
少数派として存在していた
場所柄なのか友達のグループも
その階級に応じて作られていた
子供ではあるけれど
着ている服からして全く違った
普通に2万円以上もするようなセーターを
お金持ちの子は当たり前に着ていた
みな汚い恰好で遊んでいた前の学校とはギャップが大きかった
その前の小学校では塾に通う子供はクラスでも少数だった
もちろん自分も通っていなかったし、
中学はみな公立に行くものだと思っていた
しかし新しい小学校は違った
クラスの大多数が学習塾に通い中学は受験する
というのが当たり前であった
その綺麗な人の話に戻ると
転校初日、まずは自分の家に遊びにきてもらい
次に彼女の家にも行かせてもらった
新築の家を案内しそのままなんとなく彼女の家も
案内してくれることになったのだ
その子の家は小さなアパート住まいで
中に入ると薄暗い中に
布団が5枚ひいてあり
部屋はそれ以外は無いようだった
よく見ると、小さな弟が2人いて
彼女は声かけたりあやしたりしながら
自分と話をしていた記憶がある
そこに大人はいなかった
なんというか隠しようのない現実がそこにあり
彼女もそれを当たり前の事として受け入れていた
自分が初めて貧しさの概念を認識したのはその時だったと思う
その後何度か一緒に彼女や彼女のグループの子達と
遊んでいたが
気付けば少しづつ友達関係が変わり
いわゆる中流グループの中に入っていた
決して彼女達から追い出された記憶もないし
意地悪された記憶も全くない
それでも気付いた時には中学受験をするために
塾に通う子供達のグループに入っていたのだった
どんなタイミングで自分がグループを移ったのかは
憶えていない
卒業までの2年間はそのお受験グループで自分は
遊んだりどこかに行ったりしていた
美人な子やお金持ちの子、とても賢い子も
中に混じっていた
それでも
たぶん転校初日
自分が思っている以上に寂しそうに見えて
優しさから初めて声をかけてくれた綺麗な彼女の事を
一番鮮明に覚えている
心も見た目もとても綺麗な人だった