suzume blog

Pythonを勉強中です。日々雑多なことを書いています。

見知らぬ他人

少し前の話。

家族が重い病気になった。

対処法が分からずに、かなり悩んでいた。

会社の帰り道、偶然仲の良い同僚に出くわし、いつもなら一緒に

帰るところを理由を付けて断って一人で帰るほどであった。

とても人と世間話ができる精神状態ではなかった。

 

ただひたすら、黙々と駅までの道を歩いていた。

会社帰りの人が多いのか駅に向かう人で道が混雑していた。

そこへふと韓国人か中国人の中年の女性が隣にやってきて

一緒に歩きだした。

大きなカバンを持ち、周りをキョロキョロ見渡していて

なんだか不安そうな様子であった。

彼女の様子は少し気になったが、

それ以上に人の心配をしている状態でなかったので

横に歩く彼女に気付かないふりをして自分はそのまま

黙々と歩いていた。

信号で止まった時、彼女は突然自分の方を見て

「〇〇駅?」

と一言聞いてきた。

なんとなく〇〇駅に行きたいのかなと思い、

「〇〇駅。自分もそっちの方に行きます」

と指をさしながら答えたところ

「それは良かったです!」

とニッコリ笑顔で言われて、少し戸惑ってしまった。

自分は別に彼女に道案内をするつもりもないし、

一緒に行こうと言ったわけではないが・・・

でもなんとなく歩くスピードが一緒だったのか

それとも彼女が自分に歩調を合わせていたのかは不明だが

なんとなく隣同士で一緒に駅まで歩いていった。

だいたい15分くらいか。

その間ずっと無言であった。

自分達は本当に見知らぬ他人同士。

でも傍から見たら、ずっと隣同士で歩いていたので

知り合いだと思われても仕方ない距離感であった。

それでも自分は隣に彼女がいるのを時々確認しながら

自分の悩みの世界にどっぷり浸かっていた。

そして、駅が見えてきたところで彼女と別れた。

 

念のため「あの横断歩道を渡ってあっち行けば駅です」

と伝えた。

彼女はどこまで日本語が理解したのか分からないが

「ありがとう!」

とまたにっこり笑顔で言ってくれた。

 

ただ成り行きで彼女と駅まで歩く事になったのだが、

一応彼女を無事駅まで送り届ける事ができた達成感と、

あとは単純に人から感謝してもらえたという事に

思っていた以上に嬉しくなった。

ほんの少しだけ、暗く悩んでいた気持ちが軽くなった。

 

人に親切にしたせいなのかなぜなのかは全く分からないが

その後永遠に解決しないと思っていた悩みは、

ほんの少しずつであるが解決していった。

自分は神様も仏様も信じていない無神論者ではあるけれど

もしかしたら彼女は幸福の女神だったのかもしれないな

と少し思っているのである。