よくある会社帰りの風景。
会社から駅までの間に何度か横断歩道を通る。
かなり長いものもあって、その長さの割には赤信号になるまでに
あまり時間が無く、みな足早に渡っていく。
ある小雨が降りそうな天気の帰り道。
みな雨が降り出す前に駅に辿り着こうといつも以上に早足だった。
信号がもう少しで赤になりそうだったが自分含めてかなりの人が
横断歩道を渡り始めた。
案の定、途中で信号がチカチカ点滅し始めた。
そこで一気にみな小走りとなった。
自分も珍しくダッシュを切った。
その時、前から犬を連れた人が同じように小走りで向かってきた。
犬種は分からないが可愛い中型犬だった。
通勤途中で出会う犬はかなりの癒しの存在である。
犬の横を通り過ぎた頃、視界の隅で少し後ろを歩いていた男性も
一気にダッシュを切った。
と思ったその瞬間。
その男性に向かってそれまで静かだった犬が吠え始めた。
何かが犬の気にさわったのかもしれない。
でも他の人がダッシュするのには無反応だった犬が
その男性だけには何故か反応したのだ。
彼のダッシュが犬的に脅威を感じるスピードだったのかもしれない。
何となく振り返ってみると、吠えられた男性は傷ついたような
不本意な顔をしていたのが分かった。
君はなぜ自分にだけ(吠える?)。
そんな彼のボヤキが伝わってきた気がする。
すごくその気持ち分かるよ。
心の中で彼にそう言った。